戦争のトラウマが孫世代にも連鎖――映画「父と家族とわたしのこと」、鹿児島市のガーデンズシネマ上映は28日まで 島田陽磨監督が舞台あいさつ
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「戦争トラウマ」の実態に焦点を当てたドキュメンタリー映画「父と家族とわたしのこと」(127分)が、全国公開中だ。鹿児島市のガーデンズシネマで23日、島田陽磨監督(50)が舞台あいさつ。製作の経緯や長期間にわたって人の心をむしばむ戦争の影響について語った。次の上映は28日。製作の原点は、2003年のイラク戦争取材と、前作「生きて、生きて、生きろ。」で東京電力福島第1原発事故後の福島での心的外傷後ストレス障害(PTSD)を題材にしたことだ。
イラクでは大手メディアが退避後もバグダッド陥落を取材、「銃の扱いもおぼつかない、おどおどした米軍兵士」の姿を目にした。聞けば米中西部や南部の貧困地区の出身者が多く、大学の奨学金を得るため入隊していた。恐怖に駆られるとすぐ撃つため、民間人への誤射事件が頻発した。
彼らは帰国後にどうなったか。気になって調べると、戦闘での死者数の何倍もの元兵士たちが自殺を図り、家族への暴力や薬物依存に陥っていた。「物理的な戦闘は一部で、実際は何年にもわたって人の心をむしばむのが戦争だと知った」
前作では沖縄戦のPTSDを診ていた医師に取材。トラウマはDVやアルコール依存症という形で、孫世代へ連鎖するケースがあった。
日本兵にPTSDの影響はないのか。国による本格的な調査はなされてこなかった。温厚だった青年が戦地から帰還後、酒に溺れて暴れる、あるいは自ら命を絶つ。家族は「恥」「家庭内の特殊な問題」として隠し、「社会の中に深く沈殿させてきた」とする。
作品は、元兵士の子どもや孫である3人を見つめる。父から虐待を受け育った藤岡美千代さん、泥酔した父が母に浴びせた「淫売女」という罵声が傷となった市原和彦さん、祖父に虐待された母に育てられた佐藤ゆなさん(仮名)。
壮絶な記憶と葛藤する彼らはある時、示し合わせたかのように従軍記録を取り寄せるなどして親の足跡を追い始める。家族を客観視することで、自身の生きづらさと向き合う姿に、島田監督は「生命力を感じた」という。
上映後、「自分の父や祖父も戦争の影響を受けていたのでは」と自らの家族関係に思いをはせる声が寄せられている。いかに多くの例が埋もれているかを物語る。
また、本作では、元の表情を残して顔を変える「AI加工」を一部の登場人物に採用した。従来のモザイク処理では「異質な人の、特殊な物語」になるような気がしていたからだ。ただ「表情自体をAIでつくれるようになると、ドキュメンタリーではなくなってしまう。今後の議論が必要」と問題提起した。
同館では8月に再映を予定している。