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4億円の工場で抹茶に大転換――せん茶工場はたった4日稼働 抹茶ブームで激変した日本一の茶どころ鹿児島
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4億円の工場で抹茶に大転換――せん茶工場はたった4日稼働 抹茶ブームで激変した日本一の茶どころ鹿児島

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2年連続で日本一の生産量を誇るかごしま茶。世界的な抹茶ブームを背景に、注目を集めるのが原料の「てん茶」です。去年の1.5倍以上の高値がついています。そんな中、てん茶の加工工場を今年から稼働させた人が、お茶どころ南九州市にいます。

「きた!と思った。ドンピシャだ」

空前の抹茶ブームは鹿児島に何をもたらすのでしょうか?日本一の産地で農家を取材しました。

農家の朝は早いと言われますが…。男性が、車で姿を現したのは鹿児島中央駅の駅前。南九州市の前原製茶の前原翔太さんです。鹿児島中央駅のすぐそばの自宅から南九州市まで通っています。

(前原製茶・前原翔太さん)
「自分が、気持ちを切り替えるために距離があった方がいい。どこからでも通えたら、働く人の求人の幅も広がるかな」

農家は畑の近くにいなければいけない。そのような考えを変えられたら――。そんな思いもあるようです。

(前原製茶・前原翔太さん)
「マイケル・ジャクソン聞いてますよ(えー)映画見ちゃったんで(なるほどね)」

好きな曲を聞きながら職場に向かう時間が、仕事モードに切り替えるタイミングです。

お茶の産地、南九州市出身の前原さん。東京農業大学を卒業後、都内の中学校で約3年半教壇に立ちました。12年前、地元に戻り、家業のお茶の世界に足を踏み入れました。2年前、全国の品評会で農林水産大臣賞を受賞しました。

(前原製茶・前原翔太さん)
「植物の方は成果が見えやすい。子供の成績が上がった、短い学生時代の1年とかで見えることはそんなに多くはなかったので」

自宅を出て、1時間ちょっと、茶畑が見えてきました。創業56年、南九州市の前原製茶は、今年、大きな転機を迎えました。この春から稼働している抹茶の原料「てん茶」の加工工場です。

(前原製茶・前原翔太さん)
「ここは、てん茶の工場ですね(すごいですね。入った瞬間にお茶の香りがする)」

鹿児島の代表的な品種、「ゆたかみどり」のてん茶が作られていました。

(前原製茶・前原翔太さん)
「(蒸気をあてる意味は、どういう目的があるんですか?)発酵止めですね。発酵させず緑色を維持するために蒸気をあてている」

蒸した茶葉に熱を加えて、少しずつ乾燥させる。製造工程は、いたってシンプルです。

(内田直之キャスター)
「(もしよろしければ?)さわったらパリパリしている。水分量が減っている。硬さも変わりますね。香りが、だいぶ香ばしくなってきましたね。あぶった後のような感じです」

会社はこれまで緑茶の一種「せん茶」を製造していましたが、今年は、一番茶を出荷したあと全て、てん茶に切り替えました。そのため、せん茶の工場が稼働したのは、今年は、わずか4日だけ。せん茶にとって代わって一躍、脚光を浴びたのが抹茶でした。

てん茶工場の総事業費は、約4億円――。自己資金約2億2000万円を投じて整備しました。抹茶ブームの今は、この機械の製造が追いつかず、工場を作るにも数年待ちの状態だと言います。

(前原製茶・前原翔太さん)
「てん茶に今年は大きく切り替える。舵を切る。(背中を押したのは今のブームですか?)それは大きかった。今のブームより前、2年前に構想を立てた。お茶が低迷する頃に何かしなければ何か新しいことを始めなければ。矢先に重なったタイミング。ちょっとした偶然はあった」

「せん茶」と「てん茶」育て方、加工方法に違いがあります。新芽をシートで長く覆って日光を遮るのがてん茶。うまみ成分のテアニンが苦みの元、カテキンに変わるのを防ぐと言います。葉っぱを揉みこんで乾かす「せん茶」に対して「てん茶」は、揉まずに乾燥させます。細かくすり潰して「抹茶」が作られます。

世界的な抹茶ブームを背景に高値で取引される「てん茶」。先月は、去年の約1.5倍、1キロあたり8738円の値がつきました。全国で品薄の状態で、この日は、志布志市の堀口園が買い付けにやって来ました。

(堀口園・西晃平さん)
「抹茶の需要があるので、量が足りてないのが現状。弊社も作っているけど、それよりも必要。(前原製茶の)評判もいいですよ。海外の方にも(初年度でけっこういい形で出せたのかな?)」

ほとんどの「てん茶」が、アメリカに輸出され、最近はヨーロッパからの問い合わせも増えているそうです。今年、初めて「てん茶」を製造した前原製茶――。売り上げはこれまでの2倍近くに上がり、会社は好影響を受けています。

(前原製茶・前原翔太さん)
「思いましたよ。最初。きた!と思った。ドンピシャだと思いましたね。低迷をしていた時代があった中で、働くスタッフに給料がちゃんと確保できたのが何よりも嬉しい」

一方、現在の社長、父・博法さんは戸惑いを隠せません。

(父・博法さん)
「長いスパンで見てどうなのか?お茶が暴落したりすると、かつてのせん茶と一緒ぐらいに…」

ペットボトルの緑茶が普及し、抹茶はカフェで飲む機会が増えました。40年、茶葉と向き合ってきた博法さんがいま…。思うことは――。

(父・博法さん)
「プライドを持っていかないとやっていけないですよね。もっと、いいお茶を作りたいとは思いますよね」

休日。前原さんは鹿児島中央駅前の商業施設を訪ねました。県産のお茶を提供するローカ。前原製茶のお茶も扱っていますが、提供の仕方が一風変わっています。季節のお茶として、様々な食材と緑茶を一緒に入れて提供します。

この日は、しその葉。緑茶としそを一緒に味わう新しい飲み方です。

(前原製茶・前原翔太さん)
「けっこう、しその香りするね。おーおいしいね。けっこう香りが負けないんだな」

(ローカ・岩越駿太さん)
「基本的には、鹿児島の和素材。鹿児島在来の柑橘を極力使うようにしている。夏はパッションフルーツを入れたり、来年以降は考えている」

次々と新しい変化が生まれている日本古来のお茶。

(前原製茶・前原翔太さん)
「これ飲み終わった後に、普通のせん茶を飲みたいなと思ってくれたらいい。カバー曲聞いてオリジナルソングが聞きたくなった。そんな感じでいい。これが悪いとは思わない」

県茶業青年の会、会長も務める前原さんは、これから後継者が増えれば…と話します。世界的な抹茶ブームは今、農家を明るく照らしています。

((KYT news.everyかごしま 26年8月18日放送)