鹿児島県・笠利町佐仁「ユリ物語」看板設置「みんなに観てほしい」願いかなう、県道沿い、摘み取り被害なく 区長が気持ち代弁
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奄美市笠利町佐仁集落の入り口から屋仁集落にかけて県道沿いにユリ(テッポウユリ)が自生している。現在は開花期を過ぎたが、摘み取りから守ろうと設置されたのが「ユリ物語」の看板だ。「みんなに観てほしい」「それが私の生きがい」といったユリの気持ちを代弁するような文面がつづられている。今月に入り看板は外されたが、ユリの願いがかない被害はなく自生の環境が保たれた。看板を設置したのは集落区長(2区)の南豊志さん(66)。「百合ロード」の看板で示した県道沿いの自生地は佐仁から楠野を通り屋仁の峠部分にかけての約2・5㌔。道路沿いだけでなく山の上まで多くのユリが自生するのが佐仁集落入り口で海側に設置された休憩施設がある箇所。
「元々は老人クラブが管理していた。夕涼みなどを行う場所で、群生していることから開花期になると、とてもきれいに咲き誇った様子を観察できる。ところが心無い人が花を摘んでいく。集落の常会で『何とかならないか』との声が寄せられ、集落区長として手を打った」と南さん。被害を防ぐ注意喚起の方法を思案した結果、設置したのが「ユリ物語」と題した看板。「野生の花。固有種でもなく摘み取りを規制できない。でも自然のまま残したい。そこで花を摘み取る人に対し、取られたくないというユリの気持ちを代弁した。純白の花が広がる景観を多くの人々に見てもらいたい」と南さんが考え書いた文面は、「ここを通るたくさんの人が 私たちの姿を観て思う 『うわ~綺麗』『また 春が来たね』『綺麗な つぼみ』 みんなが喜んでくれる それを見ていて 私も嬉しい」など。まるでユリたちが語りかけてくるようだ。
開花期に合わせて4年前から2か所に設置しているという「ユリ物語」看板。今年はまだつぼみが多かった3月下旬に設置し、開花期を過ぎた今月2日には外した。ユリの思いを示した南さんの看板により今年は被害がなかったという。看板は南さんが保管し、来年の開花期にまた設置される。
南さんは一つのユリから千個ぐらいも採取できるという種を回収し保管。降雨を考慮して梅雨時期にまく方針で、「近く種をまきたい。芽が出て育ち、道路沿いのユリがさらに増えたら」と話した。
同町出身、大野隼夫さんの著書『奄美の四季と植物考』には「白百合咲いて春は去る」の記載があり、「『緑の風の季節』に純白、清そ、優雅そのものの白百合が島々の春の終末を飾るのである」と紹介している。