鹿児島県奄美大島「ソテツ守る」「奄美の風景や文化守る」市民参加型提言・田町さん
📰 全文
奄美群島内でも特に奄美大島で深刻なソテツシロカイガラムシ(外来種で学名アウラカスピス・ヤスマツイ=英語表記の通称はCAS〈キャス〉)によるソテツ被害は、葉枯れだけでなく幹が倒れたり空洞化するなど枯死状態にある。4月は新芽が出る時期で、県が示している防除スケジュールでは「春からの繰り返し薬剤散布が大切」とする中、市民の行動につなげる市民参加型が提言されている。「ソテツを守ることは、奄美の風景や文化を守ることにつながる。行政の取り組みを土台にしながら、市民一人一人の行動が重なることで、この問題は前に進むのではないか」。SNSなどを通し呼び掛けているのは1996年から約20年間奄美で暮らし、現在は山梨県に住む田町まさよさん(55)。
現在も奄美と関わり続けており、2021年から毎年奄美を訪れているという。田町さんが危機感をより募らせたのは今年の現状。「昨年も同じ時期(3月にかけて)に訪れた。昨年は葉が黄白色になり、枯れていると感じた。1年が経過した今年は葉も失い幹だけとなり、その幹も折れ、芯(しん)が露出し、空洞化した無残なソテツの姿だった。明らかに悪化し問題が深刻化している」。田町さんは種の保存に取り組んでいる知り合いに話を聞いたり、行政関係者などにも対策を直訴した。
こうした行動で気付いたのは「行政や研究機関などによって対策(被害葉の切除や繰り返しの薬剤散布)が進められている。鹿児島県のホームページでも被害葉の除去や薬剤散布などの具体的な方法が示されている。しかし、現場の声を聞くと、それが十分に市民の行動につながっていない。ソテツは私有地にも多く、行政だけでは対応に限界がある」。そこで田町さんは、市民ができることを具体的にまとめた。
「ソテツを守るための市民参加型提言」の主な内容は次の通り。
確認=自宅や畑、身近な場所にソテツがあるか確認する▽状態の観察と記録、処理=葉の黄色や白い付着物など、異変がないか観察し、必要に応じて写真を撮る。被害葉の除去や薬剤散布などは県の指針や専門機関の指示に基づく▽拡散防止意識=作業時の衣服や道具への付着に注意し、ソテツを島外へ持ち出さない▽島外への発信強化と観光客への啓発=島外ではほとんど認識されていないと感じた。奄美には島外にも多くのファンがおり、自然や文化を大切に思う人たちの応援や協力を得られる可能性がある。「島外に向けた情報発信の強化」「観光客にもわかりやすい形での現状共有」が重要。観光客向けにわかりやすく整理した啓発パンフレットを空港や宿泊施設などに置き、「何が起きているか」だけでなく、「観光客として気を付けること」も明記。将来的にソテツ基金のような仕組みをつくる場合には、島外の人々も寄付や支援に参加しやすい形に。
◆ ◆
県と薬剤メーカーの実証試験により水稲で使用されている薬剤がソテツにも効果があると判明し、昨年4月、メーカーによる国(農林水産省)への登録申請が行われた。しかし認可の見通しは立っていない。これに対し奄美の市町村で関心を示すのが、群生地での被害対策助成に取り組んでいる龍郷町。今年度の施政方針で竹田泰典町長は「新規農薬の早期認証と普及啓発を関係機関に要望していく」としている。