クロウサギの寿命は、一般的ウサギの約5倍 骨の分析で独自の進化解明 保全強化の提言も 世界自然遺産5周年講演会 鹿児島県・徳之島
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【鹿児島県・徳之島】世界自然遺産登録5周年記念講演会(徳之島地区自然保護協議会主催)が20日夜、伊仙町中央公民館で開かれた。元世界遺産委員会委員で琉球大学名誉教授の伊澤雅子氏と、恐竜学者・化石研究者の林昭次氏が登壇。徳之島を含む中琉球地域の生物多様性や独自の進化、世界自然遺産登録から5年を経た保全上の課題について、最新の研究成果を交えて解説した。林氏は「骨から探るケナガネズミとアマミノクロウサギの生態―恐竜研究の手法から―」と題して講演。骨の断面に刻まれた年輪状の組織「成長線」を顕微鏡で分析する骨組織学(ボーン・ヒストロジー)の手法を用い、アマミノクロウサギやケナガネズミの成長の特徴を紹介した。
それによると、アマミノクロウサギは一般的なウサギ類と比べて成長が遅く、長寿の傾向がある。骨の分析から、「一般的なウサギの約5倍の時間をかけて成長する生活史が明らかになった」という。
島という限られた環境で独自の進化を遂げる「島嶼(とうしょ)化」も関係していると考えられる。大型の肉食哺乳類などの天敵がいなかった環境の中で、素早い逃避や短期間での繁殖に頼らず、ゆっくり成長して長く生きる生態を獲得した可能性がある。一方で、成長が遅く長寿であることは、個体数が減少した場合に回復まで長い時間を要することにもつながる。林氏は、こうした生態的特徴を踏まえた長期的な保全の重要性を示した。
国の天然記念物であるケナガネズミの骨分析でも、初期成長を終えた後、時間をかけて成長する特徴が確認されたという。林氏は、島に生息する動物たちが独自の成長パターンを持つことを説明し、骨の分析から生態を解明する研究の意義を伝えた。
一方、伊澤氏は「世界自然遺産5周年、次の5周年に向けて」と題して講演。徳之島を含む中琉球地域は、太古の大陸分離によって隔離され、独自の進化を遂げた生物が数多く生息する「進化の実験場」だと強調した。
徳之島は、中琉球の中でも哺乳類に占める固有種の割合が高い地域。トクノシマトゲネズミは、オスのY染色体を持たないにもかかわらず性決定が行われる特異な遺伝的特徴を持ち、世界的にも注目されている。
世界自然遺産登録から5年が経過した一方、伊澤氏は「登録自体がゴールとなってしまい、その後の保全活動には反省点がある」と指摘。今後の課題として、野良猫の管理や、環境省指定特定外来生物シロアゴガエルの拡大防止、夜間の野生動物の交通事故対策などを挙げる。
また、希少な昆虫や爬虫(はちゅう)類を狙った密猟など不正採取への懸念も示し、住民による不審者情報の共有や関係機関との連携を呼びかけた。学術研究や新種の発見に欠かせない研究用標本が島内で不足している現状にも触れ、環境省などと連携した標本の回収・保存体制の構築が必要だと訴えた。
ほか、徳之島では目撃情報が少ないオオコウモリについて、島内で姿を見かけた際には写真を撮影し、環境省などの関係機関への情報提供を求めた。
講演後の質疑応答では、クロウサギが巣穴を塞いで子育てをする理由については、林氏は、ウサギ類としては珍しく、天敵となる肉食哺乳類がいなかった島の環境で確立された独自の繁殖戦略と考えられると説明した。
世界自然遺産登録から5年。専門家2人の講演を通じ、徳之島の自然が持つ学術的価値と、その豊かな生態系を次世代へ引き継ぐための課題が改めて浮き彫りになった。
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