世界自然遺産の奄美・沖縄、希少動物保護で個体数は回復したが…食害や交通事故が増え「共生の難しさ」直面
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世界自然遺産の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表(いりおもて)島(鹿児島、沖縄両県)」。「生物多様性」を保全する上で重要な地域と評価され、希少生物の保護が進み個体数は回復している。一方で、農作物被害や交通事故死(ロードキル)は増加傾向にある。今夏で遺産登録から5年を迎え、人々の暮らしと豊かな生態系を共に守る難しさに直面している。(小野悠紀、横山潤)「個体数も増え、生息域も広がっている。遺産の価値が守られている」。環境省奄美群島国立公園管理事務所の鈴木真理子・希少種保護増殖等専門員(44)は、希少生物保護の取り組みを積み重ねてきた手応えを語る。
同省は2000年から、固有種のアマミノクロウサギなどを捕食していたマングースの防除事業を本格的に始めた。24年度前期までに35億円以上かけ、奄美大島全域に約3万個のわなを仕掛けたり、探索犬を投入したりして約3万2600匹を捕獲するなどした。
環境省は24年9月にマングースの根絶を宣言。03年度に推計約2300匹だった島内のアマミノクロウサギは、21年度には8倍超の約1万9500匹に増えた。希少種の鳥類・オオトラツグミとアマミヤマシギの個体数も回復し、同省は今年6月末、保護増殖事業の完了を宣言した。
一方、個体数の増加で思わぬ被害も出ている。「収穫できるはずだったのに、植え替えるしかないですね」。今夏、奄美大島の大和村で樹皮が剥がれたかんきつ類「タンカン」の木を見つめ、生産農家の大海昌平さん(70)がため息をついた。アマミノクロウサギがかじったとみられ、被害を受けたタンカンは実の色や味が悪くなり、枯れることもあるという。
食害が出始めた14年頃は、アマミノクロウサギの繁殖や子育て時期にあたる秋から春先に被害が集中していたが、近年は季節を問わず発生しているという。国の統計によると、アマミノクロウサギによる24年度の農作物被害額は過去最大の1036万円となり、統計を取り始めた17年度の13倍超に上った。
大海さんは畑を金網の柵で囲んだが、一部のアマミノクロウサギが畑に巣穴を作り、残ってしまったと嘆く。特別天然記念物のため国の許可なく捕獲ができず、環境省と大和村が柵外に移す方法を検討中で、大海さんは「共生のため、研究や対策を進めてほしい」と話す。
アマミノクロウサギのロードキルも増加している。同事務所によると、昨年の奄美大島、徳之島での発生件数は過去最多の185件。遺産に登録された21年(80件)の2倍超となった。
観察スポットの山間部を通る奄美市の市道三太郎線では、21年10月から夜間の通行車両を予約制にし、1時間に4台まで、走行時速も10キロ以下を求めている。
先端技術を使って運転手に減速を促す新システムも、注目されている。徳之島町は昨年10月~今年3月、電子部品商社「太平電機」(横浜市)と共同で、事故多発地点に走行車の速度を検知するシステムを設置。時速40キロ以上は赤色、同30キロ台は黄色、それ未満は青色の警告灯が点灯する。
同地点では24年に約10件のロードキルが起きたが、設置期間中はゼロだった。奄美市は今秋にも、このシステムを導入する方向だ。
沖縄島北部に生息する鳥で天然記念物のヤンバルクイナの事故は今年24件発生(6月現在)。ここ5年で最多ペースで、昨年11月から同様の実証実験が始まった。太平電機の樋口公平社長(61)は「近くで希少な動物を検知すると電光掲示板で運転手に知らせるシステムも開発し、人と自然が共生できる社会を目指したい」と話している。
◆奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島=計約430平方キロに、アマミノクロウサギ(奄美大島、徳之島)やヤンバルクイナ(沖縄島北部)、イリオモテヤマネコ(西表島)など固有種や絶滅危惧種が生息する。2021年7月、世界自然遺産に国内で5番目に登録された。
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