この夏は鹿児島・霧島へ! 落合陽一の久々の大規模展覧会『天孫帰るってよ?』徹底レポート。
📰 全文
鹿児島県、霧島連山で最も古い火山と言われる栗野岳の中腹に、草間彌生、ダニ・カラヴァン、ジョナサン・ボロフスキーらの巨大作品が点在する〈鹿児島県霧島アートの森〉。山中を馬が疾走する風景にも遭遇できる雄大な自然とアートが融合する特別なその地は、きっと大勢の「いつか行きたいアートスポットリスト」にランクインしているだろう。でも、「いつか」ではなく、「この夏」に行きたい! 大阪・関西万博から霧島へ。アートファンにも万博民にも見逃せない、落合陽一、久々の大規模展覧会『天孫帰るってよ?』が始まっているからだ。落合陽一は2010年頃から活動を始め、最先端テクノロジーを駆使した表現ゆえ「現代の魔法使い」とも呼ばれるメディアアーティストだ。そして、コンピュータと自然が一体化する未来の世界像「デジタルネイチャー(計算機自然)」を提唱してから、今年が10年目に当たる。2021〜25年に岐阜の〈日下部民藝館〉で毎年開催された個展では、民藝や古典への傾倒、仏教美術や茶道などの東洋思想や伝統を背景に作品を発表。そして2025年の大阪・関西万博では、鏡に覆われたようなパビリオン〈null2〉をプロデュースして、圧倒的な人気を博し、アートファンだけでなく多くの人から注目される存在となっている。
「まるさんかくしかくの印影鏡 父母の姿をも百年の後に残す貴重の術 だったが やっぱり土器だね ドキドキだね 火山がどっかーん
ホモハビルスから数えて 10回くらいは噴火してるんじゃねーの
さよならホモサピエンス これまでありがとう」天孫帰るってよ?
実は展覧会『天孫帰るってよ?』の正式タイトルは上記だ。落合陽一曰く「自分でも覚えられない」くらい長く、それを読み解くには、霧島という地をまず旅したい。
鹿児島県、霧島連山で最も古い火山と言われる栗野岳の中腹に、草間彌生、ダニ・カラヴァン、ジョナサン・ボロフスキーらの巨大作品が点在する〈鹿児島県霧島アートの森〉。山中を馬が疾走する風景にも遭遇できる雄大な自然とアートが融合する特別なその地は、きっと大勢の「いつか行きたいアートスポットリスト」にランクインしているだろう。でも、「いつか」ではなく、「この夏」に行きたい! 大阪・関西万博から霧島へ。アートファンにも万博民にも見逃せない、落合陽一、久々の大規模展覧会『天孫帰るってよ?』が始まっているからだ。
落合陽一は2010年頃から活動を始め、最先端テクノロジーを駆使した表現ゆえ「現代の魔法使い」とも呼ばれるメディアアーティストだ。そして、コンピュータと自然が一体化する未来の世界像「デジタルネイチャー(計算機自然)」を提唱してから、今年が10年目に当たる。2021〜25年に岐阜の〈日下部民藝館〉で毎年開催された個展では、民藝や古典への傾倒、仏教美術や茶道などの東洋思想や伝統を背景に作品を発表。そして2025年の大阪・関西万博では、鏡に覆われたようなパビリオン〈null2〉をプロデュースして、圧倒的な人気を博し、アートファンだけでなく多くの人から注目される存在となっている。
「まるさんかくしかくの印影鏡 父母の姿をも百年の後に残す貴重の術 だったが やっぱり土器だね ドキドキだね 火山がどっかーん
ホモハビルスから数えて 10回くらいは噴火してるんじゃねーの
さよならホモサピエンス これまでありがとう」天孫帰るってよ?
実は展覧会『天孫帰るってよ?』の正式タイトルは上記だ。落合陽一曰く「自分でも覚えられない」くらい長く、それを読み解くには、霧島という地をまず旅したい。
この展覧会の主人公、「天孫(てんそん)」とは、日本神話における天照大御神=アマテラスオオミカミの孫であり、地上を治める命を受けて天から降臨したニニギノミコトである。彼の降臨場所と言われるひとつの場所が霧島の高千穂峰であり、彼を祀った〈霧島神宮〉には、できれば展覧会の前に立ち寄りたい。
「10回くらいは噴⽕してるんじゃねーの」とタイトルにあるように、この神宮は、6世紀と言われる創設以来、火山の噴火により喪失と再建を繰り返している。
現〈霧島神宮〉は15世紀の創建で、落合はここで古文書を閲覧し、国宝の本殿を参拝し、特に、1715年に薩摩藩主の島津吉貴から寄進された「龍柱」にインスピレーションを受けている。残念ながら「龍柱」は、年に1~2回の限定公開だが、境内を歩くだけで、霧島の古(いにしえ)を感じられるだろう。火難を避けるために水を司る龍を彫った極彩色の柱がどのように落合陽一の新作に影響を与えたのか? それは展覧会でのお楽しみだ。
そして、現〈霧島神宮〉から車で15分程度の距離にあるのが、以前の神宮跡〈古宮趾(こぐうし)〉である。高千穂峰への登山口の河原に位置し、緑に囲まれ石ころが広がる道を数分歩くと、鳥居だけが忽然と現れる。その奥には天孫降臨の斎場、そして見上げると雄大な高千穂の山々が連なり、神聖な空気に包まれる。
登山には往復で約4時間かかるが、高千穂の頂に天孫が突き立てたとされる伝説の鉾、「天逆鉾」がある。度重なる火山の噴火で一度折れてしまったので現在あるものはレプリカだが、それも数百年前につくられたもので詳細はわかっていないという。落合陽一はその地に登ったり、さらにはこの地方の祭りに参加をしたりと、時間をかけて霧島でフィールドワークをし、その成果を色濃く展覧会に反映させたのである。
展覧会『天孫帰るってよ?』の起点は、大阪・関西万博。〈null2〉パビリオンに展示されていた、通称 “ヌル板”《10nの人類史(記号と質量の対数年表)》(2025年)が引越し用プチプチに包まれようとしている場面から始まる。落合の長年のモチーフである青の蝶、アクティブなスマートフォンに混じり、天照大御神が天孫に授けた3種の神器「鏡・剣・勾玉」が落合流に表現されている。その横には、落合が万博最終日に切った自身の髪と万博の熱を伝えるピンバッジ付きのストラップが《落合の髪(複製できない質量)》(2025年)として作品化されている。
そして、角を巡ると、どーん!と桜島の噴火級に圧倒されるような段ボールの山々、《さようならホモサピエンス 有史以来のお引越し》(2026年)が展開されている。天孫は膨大な物質を荷造りしているようだ。
《物象化する願い、変換される身体(手長)》(2022年)、カリモクと制作した長い長い手が天井から下がる段ボールの山々には、日本の焼き物の初の本格的な図録である蜷川式胤の『観古図説』、落合が大事にしている「写真とは新しい自然である」という柳宗悦の言葉が載る雑誌、欧米のジャポニズムを連想させる図画などアカデミックな荷物から、ガンダムのプラモデル、古いファミコン、そして、太陽の塔、ミャクミャク、(『2027横浜グリーンエキスポ』の)トゥンクトゥンクなど万博キャラたちも積まれている。
特に見逃せないのは新作の2台のモニターである。入り口に近いモニター《定住遊牧民のブラウン管》(2026年)は、『天孫TV』という、AIにこの展覧会要素を読み込ませ生成したPR番組を流している。一方、奥のモニター《家財に宿る幽体の共鳴》(2026年)は、ライブで来訪者を映しながら