カゴミル 鹿児島の今のニュースを、まとめて。

← 一覧
回復力 ㊥ 世界自然遺産5年 沖縄から奄美大島へ3例 アマミヤマシギ一日で移動も「未知の能力」 鹿児島県
総合 奄美新聞 👁 4

回復力 ㊥ 世界自然遺産5年 沖縄から奄美大島へ3例 アマミヤマシギ一日で移動も「未知の能力」 鹿児島県

📰 全文
 珍しさがあるのだろう。国、鹿児島県も指定していないのに、沖縄県では県指定天然記念物のアマミヤマシギ。冬場、少数の生息が観察されているものの、奄美大島同様、スダジイなどの照葉樹林の森がある、やんばる地域(沖縄島北部)でひなが確認されていないなど繁殖の記録がない。沖縄のアマミヤマシギは、どこから移動して来ているのか不明だった。

 日本鳥獣保護連盟、奄美野鳥の会は沖縄で捕獲したアマミヤマシギにGPSタグを装着。電波を飛ばし、衛星を通して位置情報を得るもので重さ10㌘弱と軽い。背中に装着させる試みを2021年から行ったところ、23年に奄美大島に戻ることが明らかになった。新たな行動記録が生み出されたのは同年1月、やんばるの大宜味村、国頭村で捕まえた3個体への装着によって。国頭村宜名真で捕獲した1個体が、奄美市住用町石原付近まで移動したのを2月25日に確認した。直線距離で約190㌔㍍になる。

 沖縄から奄美大島への移動は今年の冬も確認された。3羽に装着したところ2羽が戻って来たという。計3例になり、内訳は雄の幼鳥と雄・雌の成鳥だ。大人の鳥である成鳥だけでなく幼鳥も長距離移動することが分かった。

 「奄美大島のものはほとんど動かない。これまでに約900羽に足輪を付けた。それが沖縄に移動するということは確認されていない。ところが沖縄にはいる。どこで生まれたものか、分かっていない。沖縄から奄美大島に移動することは調査により判明した。おそらく奄美大島から沖縄に移動していると考えられるが、それが証明できていない。奄美から沖縄への移動を調べている最中だ」。鳥飼さんは説明する。

 ▽意外性

 行動範囲をまとめよう。これまでの調査から言えることは、全アマミヤマシギのうち「99%は動かない。狭い範囲の移動」。ところが両団体の調査により「渡りとまで言い切っていいのか微妙」だが、1%以下かもしれない非常にごく一部、まれに移動(沖縄から奄美大島へ)する。沖縄で観察できるのは冬場に限られていることから、奄美で繁殖していると推察されており、「繁殖前の2月に戻っている」とみられる。「現象として移動することは間違いない。ところが、それが何のためか、分布拡大のためか理由は全然分かっていない」と鳥飼さん。

 さらに意外性とも言える新たな事実が判明した。アマミヤマシギは人と遭遇してもほとんど動かないことから、「ボーっとしている」鈍感なイメージ。現在は鳥獣保護法により禁じられているが、昔は林道などで夜間、簡単に捕まえられ食用にされた。ところが今年の調査で、驚くべきことに沖縄から一日で奄美大島に飛んでいることが分かったという。

 会見で鳥飼さんはアマミヤマシギについて「分からないことばかりの不思議な鳥だった。これまでの調査によりいろんなことが明らかになり、興味深い鳥となった」と表現した。沖縄からの一日での移動に対しては「未知の能力を持っていることを示す一端ではないか。やればできる。すごいこと」。愛着を込めるように語った。

 数についてはどうだろう。同省沖縄奄美自然環境事務所・奄美群島国立公園管理事務所は23年6月、個体数の推定を発表している。それによると、21年時点で奄美大島・加計呂麻島・徳之島の3島で1万7千羽前後まで回復した。

 「毎年、3島においてモニタリング調査している。(環境省の推定数は)妥当ではないか。劇的に増えているとまでは言えなくても、徐々に増えているのは間違いない」(鳥飼さん)。

 ▽わずか100羽

 「オオトラツグミのさえずり一斉調査を長年続けて良かったと思う。ここ10年ぐらいの状況として感じることは在来種の回復がめまぐるしいということ。調査後の集計が大変になるほど個体数が増えている。地元の自然保護団体として引き続き奄美の自然に向きあい、地道に保護活動に取り組みたい」。保護増殖事業完了の会見の場で奄美野鳥の会の永井会長は語った。

 鳥飼さんによると一斉調査は危機感が背景にあったという。100羽ぐらいしか生息していないとの報告があり、「世界の中で奄美大島にしかいない、とても貴重な鳥なのにわずか100羽とは。これは、とても由々しき事態。実態を調べないといけない」。東京大学の准教授だった研究者の懸念が野鳥の会全体に共有される形で毎年3月、一斉調査(中央林道での個体数把握)が始まった。

 1994年から開始され今年で33回目。野鳥の会の一大行事としてシステム化されたことで、保護増殖事業のオオトラツグミモニタリング調査は野鳥の会が担った。