放置竹林問題「9割以上が放置」 竹林面積日本一・鹿児島で拡大、地域資源化の試みとは
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タケノコの産地として知られる鹿児島県。だが今、その竹林をめぐって新たな課題が生まれている。放置竹林の拡大だ。「おそらく9割以上が放置されている」と専門家は推測する。一方で、厄介者になりかねない竹を地域の資源として生かし、全国から注目を集める自治体がある。鹿児島県大崎町の取り組みを中心に、竹林をめぐる「今」を追った。鹿児島市の仙巌園で風にそよぐ孟宗竹。中国が原産のこの竹は、江戸時代中期に当時の薩摩藩主・島津吉貴が中国風の庭園を造るために輸入したのが、県内での始まりとされている。その後、タケノコの需要を受けて食用として県内各地に広まっていった。
しかし近年、輸入品の増加などを背景に竹の消費量は減少。県内の竹林面積は2012年の1万6千ヘクタールから、2024年には2万ヘクタールへと拡大した。国の最新統計では、鹿児島の竹林面積は2位以下を大きく引き離して日本一となっている。
森林計画学を専門とする鹿児島大学農学部の寺岡行雄教授(森林経営学)はこう述べる。
「おそらく(竹林の)9割以上が放置されているのでそれぐらいになっている」
放置された竹林は、他の植物の生育を妨げるだけでなく、土砂崩れなどのリスクにもつながる可能性が指摘されている。
県内有数のタケノコ産地、さつま町。子供のころからタケノコづくりに関わってきた山内龍也さん(67)の竹林は、良質なタケノコを育てるために適度に竹が間引かれ、よく手入れが行き届いている。
「今の時期はウグイスが鳴いたり、気持ちのいいところですよ、竹山は」と山内さんは話す。
しかしその一方で、集落の現実にも目を向ける。
「みんな年をとっていくにつれて、竹山の手入れができないという人が多くなっている」
高齢化が進む中、放置竹林は今後さらに増えていく可能性がある。寺岡教授は、竹を「厄介者」ではなく地域の資源として生かす必要性をこう訴える。
「(竹が)売り物になってそこで人が手間をかける分のコストがまかなえるようなものが大事。この出口をしっかりと確保できれば、孟宗竹林を利用していくことに繋がっていくのでは」
そんな中、放置竹林の活用で全国から注目を集める自治体がある。町内に377ヘクタール、東京ドーム約80個分の竹林を抱える鹿児島県大崎町だ。
取り組みの中心にいるのは、大崎町の政策研究員・田中力さん。自身も耳に障害があり、竹林対策を障がい者の働く場につなげようと考えてきた。その答えが「竹炭づくり」だ。
近くの障がい者就労施設の利用者や地域住民が伐採した竹を大きな釜で燃やして炭にし、イモを栽培している町内の社会福祉法人に土壌改良材として販売する。竹林整備と福祉就労、農業をつなぐ循環の仕組みだ。
就労施設の利用者はこう語る。「やっぱりうれしいよね。みんなと会話もできるし」「地域の方々とすごく仲良くなれるし、自分も地域の発展に役立っているという実感を持てる」
田中さんも意義をこう説明する。「就労支援事業所の方々の仕事になるとか、地域の人にとっては人が集まることで情報交換ができる、昔話ができる。そういう場づくりにつながる。全国どの地域でも展開が可能だと思っている」
大崎町・中野伸一町長もその意義を認める。「行政で言う社会的弱者と言われる方々が社会参加することで地域のためにもなるし、持続可能な取り組みになるのではないかと思う」
4年前から始まったこの事業で整備された竹林は、これまでに0.3ヘクタール。大崎町全体の竹林面積と比べればわずかな面積だ。しかし、薩摩川内市でも同様の取り組みがスタートしたという。
竹は恩恵をもたらす一方で、放置すればリスクにもなり得る。高齢化が進み、担い手が減っていく中で、大崎町が示す「竹炭モデル」は、放置竹林対策の一つの答えとして、これから各地へ広がっていくかもしれない。