「畜産王国」の信頼を揺るがす牛肉偽装、発覚のきっかけは…「鹿児島産なのに肉が硬い」ふるさと納税寄付者からの情報
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ふるさと納税の返礼品として扱われていた牛肉の産地や等級を偽って代金を詐取したなどとして、鹿児島県指宿市の食肉販売会社「水迫畜産」元役員が詐欺容疑などで摘発された。偽装された牛肉を返礼品として採用していたのは県内8市町で、総寄付額は7億円超。「畜産王国」鹿児島の信頼を揺るがす事態だとして、自治体側は補償を急ぐとともに、再発防止に乗り出している。(関理一郎、渡部優斗、水木智)「鹿児島産の牛肉なのに肉が硬い」。複数の関係者によると、ふるさと納税寄付者から寄せられた情報が不正発覚のきっかけだった。情報提供を受け、農林水産省は2023年7月、同社へ立ち入り検査に入った。
農水省によると、検査後約2年半にわたる調査の結果、23年1月~24年1月に不正な表示で販売していた牛肉は、返礼品向けの約16・5トンを含む計約27トンと判明。沖縄、宮崎県産の牛肉加工品に「鹿児島県産」のラベルを貼ったり、ホルスタインや交雑種の品種を使った商品を「黒毛和牛」と表示したりしていたという。
このほか、牛の品種や飼育地が分かるよう個体ごとに割り振られている「個体識別番号」の不正表示も発覚した。複数の個体の肉を使った商品に、一つの個体識別番号のみしか表示せず販売していたという。
同社元役員で社員の被告(55)は、返礼品の牛肉の産地を偽り鹿児島産と表示して販売し、代金約140万円を詐取したなどとして、今年8月に詐欺容疑や食品表示法違反容疑で逮捕、その後在宅起訴され、法人としての同社も同法違反で起訴された。
今月1日には、等級を偽って販売し、約6350万円を詐取したなどとして、詐欺容疑で再逮捕された。最も低い等級の「C1ランク」の肉を含む商品を「A5ランク」と偽装するなどした疑いがある。鹿児島県警などによると、被告は、食肉加工を統括し、仕入れや在庫管理などを一人で担当。調べに対し、黙秘しているという。
問題の牛肉は、8市町(鹿児島市、南九州市、枕崎市、指宿市、姶良市、鹿屋市、垂水市、伊仙町)から寄付者に計約4万5000件発送。自治体側は水迫畜産の製品の取り扱いを停止し、補償対応に追われている。
自治体側は、水迫畜産や同社から納入していた業者に対し、寄付額相当の金券や本来受け取る返礼品と同等の肉製品を寄付者に発送するように求めており、同社の牛肉を採用していた8市町のうち、鹿児島市では、9割程度の補償が終了。最も寄付件数が多い南九州市(約2万1800件)や、次に多い枕崎市(約1万3200件)では、6割程度となっている。
一方、マンパワー不足などの影響もあり、自治体側が不正を監視するのは容易ではない。
枕崎市や伊仙町などは別の納入業者を通して、返礼品を寄付者に提供していた。伊仙町の担当者は「問題が発覚するまで、水迫畜産の牛肉を扱っているとは知らなかった。人員も限られており、不正表示を見抜くのは困難」と漏らす。
22年8月に同社の牛肉を返礼品として登録した鹿児島市は、産地表記などを定める食品表示法に違反しないことを確認する誓約書を提出させていたが、市の担当者は「十分なチェックはできていなかった」と打ち明ける。
事件を受け、同市は今年度中に返礼品提供事業者約240社のうち約20社に不適正な表示がないかなどを確認する実地調査に入ることを決めた。同市の担当者は「信頼回復のためにできる手を打つしかない」と話した。
ふるさと納税に詳しい山梨大の藤原真史准教授(行政学)の話「返礼品提供事業者による産地偽装などが起きる背景には、調達能力を超えた受注や制度の理解不足、チェック体制の脆弱(ぜいじゃく)さなどがある。自治体側は担当する職員数を増やし、返礼品の抜き打ち検査をするなどして、チェック体制を構築、強化することが求められる」

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