「糸木名ヤン」待望の初収穫 伊仙町・糸木名小児童が伝統のサツマイモ栽培 地域の食文化、次世代へ 鹿児島県
📰 全文
【鹿児島県・徳之島】伊仙町立糸木名小学校(古木哲校長、児童16人)で14日、児童たちが「糸木名ヤン」と名付け、6月下旬から学校園で育ててきた伝統のサツマイモを初収穫した。食味に優れるとされる在来品種の復活・継承を目指す取り組みで、食農教育の一環として栽培体験も実施。児童たちは収穫の喜びを味わうとともに、約1か月の熟成を経て焼き芋にして食べる日を心待ちにしていた。サツマイモの方言名は、伊仙町では「ヤン」、徳之島町では「ハンシン」と呼ばれる。今回収穫した「糸木名ヤン」は、中の果肉が紫色で外側が白いのが特徴。隣接する小島集落で栽培が維持され、種がかろうじて保存されてきたとみられる古来の品種だ。徳之島には、果肉が黄色い通称「キーヤン」も伝わっている。
地域の伝統野菜を次世代に残そうと、学校での栽培体験活動に取り組む鹿児島大学教育学部の実習技術専門職員、中野八伯(はつのり)さん(34)が、地域の伝統野菜を調査する過程で同島の両品種の存在を知り、地元の糸木名小児童たちに栽培してもらおうと企画した。
同校の3、4年生11人は6月24日、校舎前の学校園(約10㍍×約0・8㍍)に「糸木名ヤン」と「キーヤン」の葉茎苗を20本ずつ植え付けた。担任教諭らとともにマルチ栽培で育て、約4か月後の収穫を迎えた。
児童たちは、豊かに繁茂したイモづるが取り除かれた茎の下の土を両手でかき分けながらイモ掘りを競った。「でかいイモがあったー」「取ったぞー」などと歓声を上げ、収穫作業を満喫。大きなものは20㌢を超え、在来種ならではの大ぶりなイモも目立った。両品種合わせ約40㌔と、予想を上回る収穫量となった。
中野さんによると「糸木名ヤン」は、小島集落に伝わる伝統的なサツマイモで、奄美大島など奄美地域全体でも同系統の品種がわずかに残っている。何百年もの歳月を経る中で、自然交配などにより形質が少しずつ変化してきたと考えられている。
「糸木名ヤン」という名称は、児童・生徒や地域住民に親しみを持ってもらい、普及につなげようと考案した。在来種にはもともと固有の名称がなく、単に「ヤン」と呼ばれてきたことから、児童や関係者で候補を出し合い、多数決で決定した。
近年は「紅はるか」や「シルクスイート」など、収量が多く効率的な栽培が可能な改良品種が主流となり、収量の少ない在来種は絶滅の危機に直面している。一方、中野さんは「実は、在来種や伝統野菜は驚くほど甘くておいしい」と、その価値を強調する。
さらに、「将来、子どもたちが東京や大阪などの都市部に出て行っても、『自分の故郷には世界でここにしかない野菜がある』という誇りや記憶を持ち続けてほしい」と期待。高校生になった際には探究活動のテーマとして掘り下げ、将来的には伝統野菜を生かした事業や地域おこしにつなげてほしいとの思いもある。
収穫を終えた盛元輝さん(4年)ら児童たちは「イモがいっぱいできていて、デカかった」「紫と黄色の2種類があって、約1か月後に焼き芋などにして食べるのが楽しみ」と笑顔。地域に受け継がれてきた伝統の味と文化を、子どもたちが体験を通じて学ぶ機会となった。

コメント 0件
まだコメントはありません。最初のコメントを書いてみませんか?