塾がない地方の教育格差に自治体が挑む 月謝無料の「公営塾」鹿児島・東串良町で始動、講師は元自衛官と元警察官
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地方では学習塾が身近にない地域も少なくない。そんな課題に向き合い、鹿児島県東串良町が2025年から始めた「公営塾」が注目を集めている。月謝は無料、講師は元自衛官と元警察官という異色のコンビ。子どもたちの笑顔と保護者の安堵の声が、この取り組みの手応えを物語っている。「子供たちに学校以外でも勉強をする習慣を身につけて欲しい」担当者の思いが少しずつ実を結んでいる。東串良町教育委員会の中小野田輝幸管理課長は、公営塾を開設した背景をこう説明する。「東串良町には学習塾が少なく、近隣の塾に通っている児童生徒が多い。ただ遠方ということで行けない人たちもいるので、東串良町で塾を開設した」。
「公営塾」とは、自治体が主体となって運営する塾のことだ。地域に民間の塾がない地方自治体を中心に全国的な広がりを見せており、鹿児島県内では東串良町のほか、徳之島町や和泊町でも取り組みが進んでいる。東串良町では2025年4月からスタートし、町内にある2つの学校でそれぞれ週2回ずつ実施。対象は小学3年生以上で、料金はテキスト代の3000円のみ、月謝は無料だ。
2026年4月、東串良町教育委員会に地域おこし協力隊として新たに2人が加わった。吉野恭太郎さん(22)と森園陽任さん(41)だ。
吉野さんの前職は航空自衛隊。「自分は弟と妹がちっちゃくて小学生だが、そういう子供たちと関わる機会が多かったので、少しでも力になれたらということで」と、公営塾の講師を引き受けた動機を語る。
一方の森園さんは警察官など複数の職歴を持ち、少年剣道の指導にも携わってきた。「子供が好きということと、自分は剣道をしていて少年剣道にも携わっているところもあって、少年剣道にも生かせたらと考えた」という。
午後3時になると、2人は公営塾の会場となる小学校の図書室へ向かう。塾では学校の授業をテキストで復習する形で学習が進められ、わからないところは講師の2人がやさしく教える。柏原小学校では、3年生以上の児童の約3割が公営塾に通っているという。
子どもたちの反応は素直だ。「楽しそうだし成績も上げられると思ったからです。成績は上がっています」「学校よりちょっと難しい勉強ができるし、友達と一緒に勉強できるから」と、通塾の理由と効果を明かす。
保護者からも歓迎の声が上がっている。「家庭の事情でなかなか送迎が難しいという家庭も聞くので、自分も実際そうなので、とても助かっています」「ここは全然お金がかからないので本当に助かります。今、物価高なので特に」。送迎の負担が軽減されること、そして費用がほぼかからないことが、家庭にとって大きな支えになっている。
取り組みはさらに拡充している。2025年9月からは受験を控えた中学3年生を対象にした公営塾もスタートし、受験生たちが役場の会議室で日々勉強に取り組んでいる。
森園さんはこの変化を前向きに受け止める。「公営塾は生活の一部となっている。今後、勉強もここだけじゃなく家でもやってもらえたら」。吉野さんも「なるべく勉強は楽しくしてほしいので、公営塾のルールを守りつつ、楽しい公営塾で、勉強させていけたらいいなと思う」と話す。
地方における教育格差の解消は、一朝一夕にはいかない課題だ。しかし東串良町の公営塾は、自治体と地域おこし協力隊が手を組むことで、その一歩を着実に踏み出している。子どもたちの学びの場を地域の中で守るために、試行錯誤は続く。
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