鹿児島県・奄美市名瀬で保護増殖事業完了記念シンポ、地域で見守る保全へアマミヤマシギ・オオトラツグミ調査研究で生態明らかに
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1993年に国内希少野生動植物種に指定されたアマミヤマシギ、オオトラツグミは国による保護増殖事業が進められ、今年6月30日には国内初の事例として同事業が完了した。これを記念するシンポジウムが3日夜、奄美市名瀬のアマホームPLAZAマチナカホールであった。事業に関わり長年にわたって調査研究してきた3人の専門家による講演があり、明らかになった生態が発表された。行政主導による保護増殖事業から「地域で見守る保全」の実現が課題となる中、住民が興味関心を持ち親しむ第一歩となった。「身近になった!?奄美のミステリアスな鳥~アマミヤマシギとオオトラツグミ~」と題したシンポは環境省沖縄奄美自然環境事務所・NPO法人奄美野鳥の会主催。生態学的な面白さを一般に分かりやすく伝えることを目的にしたところ、親子連れの来場もあり会場は満席に。講演は「アマミヤマシギとオオトラツグミのミステリアスな生態を読み解く」=水田拓さん(公益財団法人 山階鳥類研究所)▽「不思議な鳥アマミヤマシギの魅力に迫る」=鳥飼久裕さん(奄美野鳥の会)▽「オオトラツグミの春のさえずり調査」=石田健さん(自由科学者・奄美野鳥の会)――の順で行われた。
講演で発表された生態に関する主な発表内容は次の通り。
【水田さん】
〈アマミヤマシギ〉奄美群島と沖縄諸島の一部に分布。常緑広葉樹の森の中に生息し、ミミズを食べ、3~6月頃に繁殖の可能性。奄美大島では笠利半島の一部を除くほぼ全域に生息。奄美大島での分布域は広がっているが、加計呂麻島、徳之島は大きな変化なし。交通事故は3月に多発し、月相が上弦から満月にかけての夜に多い。
〈オオトラツグミ〉奄美大島のみ分布。常緑広葉樹の森の中に生息し、ミミズなどの土壌動物を食べる。3~6月頃繁殖可能性。夜明け前に大きな声でさえずる。現在では笠利半島を除く奄美大島のほぼ全域に生息、生息域は徐々に広がっている。子育てでは発見した巣の68%は木の枝の股、地面から巣までの高さは平均2・97㍍。卵の数は通常3個、抱卵期間は15日、4月初めから7月初めに巣内でひなが育つ。特定できたひなの捕食者はハシブトガラス。
「これまで知られていなかった両種の生態が徐々に分かってきた。分からないことはまだまだ多い。新たなミステリーを読み解くため、さらなる研究を」
【鳥飼さん】
〈アマミヤマシギ〉和名も英名も「あまみ」がつく。保護増殖事業の成果として標識調査により野外での寿命は7~8歳ぐらいの可能性。行動調査ではほとんど移動せず、8割以上が1㌔㍍以内。自動撮影カメラ調査により昼間は薄暗い森林内で餌を探したりしており、林道利用は薄明薄暮の時間帯が多い。林道への出現は月が明るい夜に増える傾向がある。沖縄島で冬季に見つかる個体について調査したところ繁殖前に奄美へ移動している可能性があり、沖縄の国頭村宜名真から奄美市名瀬根瀬部へ一日(今年2月21日→22日)で移動した個体も。沖縄島の個体は繁殖期前に奄美大島まで海を渡って移動。繁殖地は奄美大島の可能性。奄美大島で繁殖を終えたアマミヤマシギは「越冬のため沖縄島に戻るのか」「どういう個体が渡っているのか」などの解明が今後の課題。
「絶滅危惧種から外れ、国内では初めて保護増殖事業の対象種から外れた。国の天然記念物には指定されておらず、沖縄県は独自に天然記念物にしているが、鹿児島県では指定されていない。国も県も保全しないなら、せめて島民の手で守りたい。それには島民に知ってもらう必要があり、古くから島民の食文化を支え、アマミを名前に持つ唯一の鳥であり、奄美市の鳥、『市鳥』にできないか」
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石田さんは森林伐採が与えた影響を当時の写真を示しながら報告。出荷の大半を占めたパルプチップ材の試算により、1956~92年の37年間、「奄美大島にある民有林(国有林以外)約440平方㌔のほとんどが伐採されていたことになる」。樹種ではスダジイ(イタジイ)が大きく優占(数も分量も多い)だが、2005年、15年、25年を比較すると年々少しずつ減少していることを図表で分かりやすく伝えた。
森の変遷に触れた後、オオトラツグミさえずり調査について発表。当初は「なるべくたくさん数える」から「数えきれなくなった」に変わり、一斉調査だけでなく「できる範囲で補足調査」も行っていることを説明した。会場ではオオトラツグミの美しいさえずりの音声も流れた。
環境省からは希少種や保護増殖事業の説明があった。事業完了となった鳥類2種は監視フェーズ(モニタリング実施)に移行するが、「奄美群島の一部にしか生息しないことは変わらない。事業完了が示したように自然の回復は奄美のすごさであり、ぜひ地域の皆さんが自慢してほしい。2種はあまり知られていない地味な鳥かもしれないが、調査研究で魅力が明らかにされている。地域の皆さんが興味を持ち親しむことで大きな力になる。二つの鳥の魅力を発信し広げてほしい」との呼びかけがあった。
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