「造って終わりじゃない」鹿児島市サッカースタジアム215億円計画 北九州のスタジアムが示す教訓
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構想から9年、ようやく候補地が絞り込まれた鹿児島市のサッカースタジアム計画。下鶴市長が「規模感の参考にしたい」と名指しした福岡県北九州市の「ミクニワールドスタジアム北九州」は、街に活気をもたらす一方で、毎年1億円を超える赤字という現実も抱えている。整備費の概算が215億円に上る鹿児島市の計画は、その全体像をどう描けばいいのか。8月24日、鹿児島市議会の常任委員会で市当局が明らかにしたのは、サッカースタジアムの候補地に関する重要な判断だった。
鹿児島市観光交流局の児玉博史次長は「県立鴨池庭球場の敷地などを候補地に検討を進めることにし、鹿児島サンロイヤルホテルの敷地などは検討対象から除外することにする」と述べた。
整備が計画されるのは鹿児島市与次郎にある県立鴨池庭球場だ。この場所でJ1の基準を満たす1万5000席以上のスタジアム建設を目指す。スタジアム構想が持ち上がってから実に9年、これまでいくつもの候補地が浮かんでは消えてきた。候補地の絞り込みを「大きな節目」とする下鶴市長は、鹿児島で造りたいスタジアムとしてイメージする場所として北九州や金沢のスタジアムを挙げた。
「目指していくのはJ1規格の規模なので少し大きさが違うかもしれないが、北九州や金沢が参考になる」
その北九州市にあるのが、ミクニワールドスタジアム北九州、通称「ミクスタ」だ。サッカーJ3ギラヴァンツ北九州のホームスタジアムとして2017年にオープンした。それ以前に使われていた陸上競技場の規模の小ささや、ギラヴァンツのJ1入りを願う声の広がりを受けて完成した施設である。
JR小倉駅から歩いて10分ほどというアクセスの良さはまさに「街なか」のスタジアムだ。スタジアムまでの道はほとんど屋根で覆われており、雨の日の移動も心配がいらない。
スタンドに入ると、天然芝のピッチを囲む3方が上下2層の造りで、壮観な光景が広がる。指定管理者・ウインドシップ北九州の清水美徳さんが案内するミクスタの最大の自慢は「ゼロタッチスタンド」と呼ばれる仕掛けだ。
「一番前の席に座ると選手と同じ目線になる。これが特長になっている。より臨場感があり、目の前で見ることができる」
バックスタンドのすぐ後ろには岸壁が広がり、海と山を同時に望む最高のロケーションも魅力の一つだ。試合観戦だけでなく、VIPラウンジや会議室なども整備されており、有料で貸し出してビジネスの商談やもてなしの場としても活用されている。清水さんは「ほどよい大きさというのも魅力の一つ。造るにしろ維持するにしろお金がかかるので、それをいかに回収するか」と語る。
ミクスタの整備にかかった費用は100億円。そのうち30億円はスポーツ振興くじの助成金で賄われたが、残りの70億円は市債、つまり市の借金だ。
年間の利用者数は21万人を目標としており、コロナ禍の影響を受けながらもその数字に近づきつつある。しかし、収支の実態を見ると課題が浮かび上がる。使用料などで得る収入は約4000万円にとどまる一方、指定管理料と土地の借地料を合わせた支出は1億5000万円前後に達し、毎年1億円を超える赤字が続いている。
北九州市スポーツ振興課の平塚豊和さんは「収入に対し支出がどうしても多く赤字になるが、そこは経済効果でにぎわいを見せている」と話す。市の担当者が強調するのは赤字を上回る経済効果だ。スタジアム完成直後の試算では、1年間で約11.2億円の経済効果が生まれたとされている。駅周辺の人の流れも3割ほど増えたという。
市民の声もさまざまだ。20代の市民は「スポーツを見に行こうと集まることがあり、若い人たちも行くので重要な施設」と評価する。一方で80代の市民は「北九州市民が気持ちよく1歩、2歩と足を運べる『こんなのがあるから行ってみよう』とならないと、100億円もかけてもったいないスタジアム」と率直な思いを口にした。
運用開始からまもなく10年を迎えるミクスタの現状は、効果と課題が表裏一体であることを鹿児島市に伝えている。
鹿児島市のスタジアム計画で浮かび上がる最大の課題は費用だ。庭球場の移設費用28億円を含めた整備費の概算は215億円に上る。行政と民間がそれぞれどのように費用を負担するか、その枠組みを決めることがスタジアム実現への最大のハードルとなる。
鹿児島ユナイテッドFCの徳重剛代表は応分の負担の意向を示しつつ、スタジアム整備の効果を丁寧に示していく必要があると語る。「候補地と言われる所に整備されたら、その地域や鹿児島に対し、どのような波及効果やプラス面があるか、しっかりと議論がなされなければならない」
候補地が絞り込まれ、ようやく前に進み始めた鹿児島市のスタジアム計画。巨額な建設費に加え、完成後の運営費も含めたスタジアムの全体像を市民に示すことが、今後の鹿児島市には強く求められる。北九州のミクスタが教えてくれるのは、スタジアムは造って終わりではなく、いかに街と一体となって使い続けるかが問われるということだ。
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