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「九州の交通インフラは脆弱」熊本地震で浮き彫り、博多-熊本-鹿児島「一本足打法」では駄目…強靱化への方策は

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 7月の熊本地震では、九州新幹線などの鉄道や高速道路といった交通インフラ(社会基盤)に甚大な被害が出て、経済活動に多大な影響を及ぼした。今後の大災害に備え、九州をさらに強靱(きょうじん)化していくための方策や、経済成長の土台となる交通インフラへの投資について、九州大アジア防災研究センターの塚原健一教授に聞いた。(聞き手 山田真也)

 ――今回の熊本地震をどのように受け止めたか。

 「九州の交通インフラは脆弱(ぜいじゃく)だということが改めて浮き彫りになった。九州は新幹線も高速道路も、博多から熊本、鹿児島までの縦のラインの一本足打法になっており、それでは駄目だということがはっきりした」

 ――九州新幹線の熊本(熊本市)―新水俣(熊本県水俣市)間は約50日にわたって不通となった。

 「新幹線は災害に強く大丈夫、と考えていた人もいると思うが、直下型の地震でやられれば構造物にある程度の損傷を受け、2か月単位で止まるということを再認識する必要がある」

 「全国に活断層は存在し、被害はどこでもありうる。それを前提に交通ネットワークを整備しないといけない。九州では、北九州市から大分市、宮崎市、鹿児島市をつなぐ東九州新幹線が必要だという議論になる。バイパスは不可欠だ」

 ――東九州新幹線は国の基本計画路線だが、半世紀以上動きがなかった。一方、政府は今年度、整備手法を検討する「ケーススタディー」の対象路線に選ぶなど局面が変わった。

 「東九州新幹線の検討、整備は急ぐべきだ。南海トラフ地震が起きればJR日豊線は被災するので、事前復興の観点からも、(九州新幹線などと同じ)フル規格で整備すべきだ。財政への配慮で、一部には単線区間があってもよいと思う」

 「交通アクセス(手段)が大きな課題となっている北九州空港(北九州市)に、小倉駅から足立山を抜けるトンネル経由で東九州新幹線を直接乗り入れさせる整備も検討すべきだ。鹿児島空港(鹿児島県霧島市)の地下に駅を造る議論も出ており、それも良い案だと思う。高速鉄道と空港の直結は欧州ではよくあり、東九州新幹線で実現できれば劇的な効果を生むだろう」

 ――熊本地震では九州自動車道も一時寸断された。代替路で東九州道が利用されたが、課題が多かった。

 「一部に未開通区間がある上、ほとんどの区間が片側1車線で、物流には致命的だ。迂回(うかい)路となったが、九州道より数時間余計にかかった。南海トラフ地震を考えれば、10年以内の完全4車線化を目指すべきだ」

 ――九州では長年、博多・熊本・鹿児島のラインと東九州側との「東西格差」が指摘されてきた。

 「東西格差はインフラ整備に伴い人為的につくられたものだ。東九州にも新幹線、高速道路をきちんと整備すれば、産業振興、雇用創出などの効果が生まれ、九州全体の発展にもつながる」

 ――南海トラフ地震への備えで他にすべきことは。

 「避難路や救援路となる中九州横断道路(熊本市―大分市)、九州中央道(熊本県嘉島町―宮崎県延岡市)は10年以内に完成させるべきだ。すぐにできることとしては、海からの支援態勢を再検討すべきで、耐震強化岸壁が整備されている大分港や臼杵港(大分県臼杵市)などの活用の具体化を考える必要がある」

 ――熊本地震では断水の長期化が問題となった。今後の対策をどう考えるか。

 「災害時に生活用水を確保するため、自治体は、学校や公民館などの避難所に災害用井戸の整備を進めていくべきだ。平時は手押しポンプ式で、災害時は電動にすれば供給量も増やせる。1か所あたり約30万円でできる。最も地震の発生確率が高い『Sランク』の活断層があるエリアの避難所には全て整備していい」

 ――民間企業では肥後銀行(熊本市)が松橋支店の敷地内など10か所に防災井戸を設置しており、今回の熊本地震後に活用された。

 「とても良い取り組みだ。各県にある地方銀行など他の民間企業も取り組んでほしい。社会貢献にもなる」

 ――企画「未来創造2050」では2050年の九州・山口の将来像を考えている。可能性をどうみるか。

 「可能性は十分あり、悲観的になる必要はない。昔から九州とよく比較されてきたオランダが発展している背景には、交通網の充実がある。欧州連合(EU)になり、高速道路と高速鉄道を整備して一体化しようという流れに乗ってオランダは伸びた」

 「一方、九州は交通インフラの整備が進んでいない。九州の可能性を高めるには、交通インフラをきちんと整備し、生産性を高めることが必要だ。九州内の高速道路や新幹線網を強くする。熊本市には『熊本都市高速道路』の整備がマストだ。さらに、本州、四国へのネットワーク強化、経済圏の拡大が必要となる」

 「九州と本州を結ぶ下関北九州道路の整備は着実に進める。四国新幹線は松山市で止めるのではなく、豊予海峡を渡らせて大分市まで延ばし、東九州新幹線と接続すべきだ。山陽新幹線が寸断した場合のバイパスになり、貨物新幹線としても利用できる。高速道路の『豊後伊予連絡道路』も整備が必要だ。こうした交通網が完成すれば、巨大な経済圏もできる」

 ――福岡空港(福岡市)は容量が足りず、九州経済のボトルネックになっているとの指摘がある。

 「24時間使えず、拡張余地もないので、将来的には海上新空港への移転の検討が必要になるだろう。東九州新幹線など他のインフラ議論が進むので、それらを踏まえ福岡空港をどうするのかも決める必要がある」

 ――交通網強化の実現には多額の費用が必要だが、資金調達はどう考えるか。

 「下関北九州道路と豊後伊予連絡道路については、政府予算の投入に加え、有料道路制度を導入して利用者にも負担してもらえば整備は可能だ。その分、国費の投入額は抑えられる」

 「新幹線は、高市政権が掲げる国土強靱化と地域の成長戦略に合致するので、国費投入額(年間約800億円)を増やすべきだ。さらに、大分県の佐藤樹一郎知事らが提案している既存の新幹線の利用者(年約4億人)に数百円程度を負担してもらう案も良いと思う。新幹線を整備すれば、駅周辺の再開発などにもつながり、地域経済が活性化して税収も増える。それは九州新幹線の絶大な整備効果をみれば明らかだ。東九州新幹線も実現可能性は十分ある。非現実的なことを言っているのではない。空港は、PFI(民間資金を活用した社会資本整備)が有力だ」