松井裕樹、奄美大島への感謝を胸に戦う
📰 全文
パドレスの松井裕樹(30)が、シーズン終盤に安定感を増している。その投球を支える重要な場所が、毎年1月に約3週間の自主トレを行う鹿児島・奄美大島だ。2023年にスタートし、今年1月で4年目。松井はこの地で長いシーズンを戦い抜くための土台を作り、心身ともにタフな1年に備えている。
「奄美のみなさんの協力のおかげで1年間、投げるためのいい自主トレができる環境を整えていただいています。地域のみなさんには、とても感謝しています。活躍で恩返ししたいです」
今年は千葉ロッテの鈴木昭汰(27)、宮崎竜成(25)、阪神の津田淳哉(25)、広島の佐藤柳之介(23)ら後輩とともに、朝から夕方まで体づくりや投球練習に取り組んだ。
ピラティスなども取り入れながら自分の体と向き合い、約3週間をかけてシーズンに向けた準備を進める。松井自身も、今季の好投につながっている要因の1つとして、この奄美大島での自主トレを重視している。
奄美大島は1月でも平均気温が約15度と温暖で野球施設も充実する。魚介類や島野菜など食材にも恵まれ、世界自然遺産の豊かな自然が広がる。野球に集中しながら心身を整えるには格好の環境だ。
「充実した練習環境はもちろん、好きな場所もできました」
同時に、大切にしていることが地域とのつながりだ。長期間にわたって集中して練習できる環境は、施設の確保を含め、地元の人々のサポートによって支えられている。松井はその支援に感謝し、今後は少年野球教室などを通じて子どもたちと交流したい意向を持つ。野球で地域に恩返しする機会を考えている。
奄美大島での自主トレを始めた背景には、後輩へ自身の経験を還元したいとの思いもある。東北楽天時代の2022年オフ、それまで9年間にわたって田中将大(37=現巨人)と行ってきた自主トレから独立し、奄美大島を拠点に練習を開始。
その後、球団の枠を越えて参加者が増えた。鈴木や津田らは複数年にわたって参加し、投球技術だけでなく、体の使い方やシーズン中の準備、考え方なども学んでいる。
その積み重ねが、メジャー3年目の今季にもつながっている。松井は左内転筋の負傷で開幕を負傷者リストで迎え、メジャー復帰は5月までずれ込んだ。それでも40試合に登板し、3勝1敗、8ホールド、防御率2.10。51回1/3で55三振を奪っている。
8月26日(日本時間27日)のパイレーツ戦では2点リードの7回1死一、二塁から登板。内野安打で満塁とピンチを招いたが、後続2人を連続三振に仕留め、2/3回を1安打無失点。今季8ホールド目を挙げ、7試合連続無失点とした。
直近7試合は6回1/3を無失点、3安打、3四球、8奪三振。先発投手が早期降板した際の複数イニングから接戦の終盤まで、幅広い役割で結果を残している。
メジャー3年目の今季、負傷による出遅れを乗り越え、防御率2点台前半まで数字を伸ばした左腕。その土台には、真冬の奄美大島で積み重ねる地道な準備がある。
「引退するまで奄美大島での自主トレを続けたいですね」
松井は米国で遠く離れた奄美大島への感謝を抱きながら、左腕を振っている。
文/写真:山田結軌(MLBジャーナリスト)