まだ動いていない断層が怖い 日奈久断層「八代海区間」が動けば出水・長島に津波の恐れも 専門家が警鐘【鹿児島】
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今回の地震を引き起こしたのは、熊本県益城町から出水市沖まで伸びる「日奈久断層」のずれだといわれている。そして、この断層の中でも鹿児島に近い「八代海区間」はまだ動いていない。地域住民にとって、他人事では済まされない事実だ。30年にわたり国と共同でこの断層を調査してきた鹿児島大学・井村隆介准教授(地質学専門)に、地震のメカニズムと私たちが今すべきことを聞いた。日奈久断層は、益城町から出水市沖まで連なる長大な断層帯だ。井村准教授はその規模についてこう説明する。
「布田川断層と日奈久断層の北の方だけ動いた。日奈久断層は益城町のところから、長島が見えますけど、出水市沖まで。こんなに大きく長い一連に見える断層なのに、熊本地震の時には一番北の端しか動いていなかった」
つまり、断層帯の大部分はエネルギーを蓄えたまま、今も地下に眠り続けているということになる。今回動いた区間についても、以前から「ポテンシャルが高い」と評価されていた部分だったという。
今回の地震のメカニズムは「基本的には横ズレがメイン」であり、エネルギー規模としては「10年前の熊本地震の方が倍ぐらい大きい」と井村准教授は述べる。また、今回の断層ずれが起こる確率は、以前の評価では「30年以内で1パーセントとか2パーセントとかそれぐらい」とされていた。確率は低くとも、現実に動いた。それが今回の地震が示す厳しい事実だ。
最も注目すべきは、今回動かなかった区間の存在だ。
「この八代海区間の方はまだ全然動いていない。この部分が動くと鹿児島県内にも影響が大きい。出水市や長島町、この区間が断層として動くと津波がこの辺を襲うということになると思う」
出水市や長島町は鹿児島県北部に位置し、八代海に面した地域だ。この区間が将来的に動いた場合、沿岸部への津波の影響が懸念される。地震の揺れだけでなく、津波リスクも視野に入れた備えが求められる。
10年前の熊本地震では、前震の2日後に本震が発生した。今回の地震もその教訓として受け止め、余震への警戒を続けることが重要だ。井村准教授はさらにこう呼びかける。
「今回の地震を教訓に、県内で強く揺れたところ、より大きな地震が来ればそのエリアが広くなる。日本中どこでも震度6になるというのは別に熊本で起こったからではなく、鹿児島市の直下でも起こりうる。普段から"備える"ことを今一度確認して頂きたい」
遠い地域の出来事として受け取るのではなく、鹿児島市を含む県内全域が当事者として考える必要があるという認識だ。
地震への備えと並行して、今の時期に特有のリスクにも目を向ける必要がある。井村准教授は避難生活における熱中症対策についても言及し、行政への協力も呼びかける。
「トイレにいきたくなるから水分をとるのをやめると大変。個人でトイレを準備するというのはなかなか難しい。普段のライフラインの確保を今一度確認しておいて頂きたい。すぐ対応できるよう準備をしておいて頂きたい」
夏場の避難では、暑さによる体力消耗に加え、水分を控えることで熱中症のリスクが高まる。仮設トイレの設置など、行政レベルの対応も欠かせない。個人でできる備蓄の確認とあわせて、地域全体での対策が求められる。
日奈久断層の調査を30年続けてきた専門家の言葉には、データに裏打ちされた重みがある。「いつ起きるかわからない」ではなく、「いつ起きても対応できるよう備える」。その意識への転換が、今まさに問われている。