鹿児島県 犬田布騒動の歴史学ぶ 「義の精神」劇に込めて 伊仙町・犬田布中で 文化祭へ事前講話
📰 全文
【徳之島】伊仙町立犬田布中学校(望月美伸校長)で8日、1・2年生34人を対象に、10月末予定の文化祭恒例の劇「犬田布騒動(犬田布義戦)」に向けた事前学習講話が行われた。町教育委員会・町誌編纂室長の松岡由紀学芸員(55)が事件の歴史的背景や先人の思いを解説し、島唄唄者の實(さね)夏三さん(43)が「犬田布節」を披露。生徒たちは約162年前の出来事に耳を傾け、郷土に受け継がれる義の精神について理解を深めた。犬田布騒動は1864年、薩摩藩による過酷な黒糖政策に苦しむ住民が、役人に捕らえられた村民を救うため約150人で蜂起した事件。当時、奄美群島では薩摩藩の「砂糖総買入制度」のもと、島民は黒糖を自由に売買することが禁じられ、極端な低価格での買い上げや厳しい統制を強いられていた。
松岡室長のテーマは「劇『犬田布騒動』を100倍深く理解する歴史講義」。日本史も対比させた当時の時代背景・世相も含め分かりやすく誘導。その上で薩摩藩が巨額の財政難を背景に黒糖支配を強化したことや、現金の代わりに有効期限付きの「砂糖切手」が支給されていたこと、私的な砂糖の所持や喫食まで厳しく禁じられたことなどを紹介。さらに、水田のサトウキビ畑への強制転換による食糧不足から、ソテツやドングリで飢えをしのいだ「黒糖地獄」の実情についても説明した。
そして、事件(騒動)の発端となったのは、大凶作にもかかわらず豊作年をも大きく上回る黒糖の上納を命じられたことだった。呼び出された高齢の福重に代わり、甥の為盛が身代わりとなって名乗り出て死線をさまよう拷問を受けたことが住民の怒りを呼び、約150人が鎌や棒を手に立ち上がった。松岡室長は「歴史上は『犬田布騒動』とされるが、島では義のために立ち上がった戦い『犬田布義戦』とも語り継がれている」と説明した。
講義の合間には、当時の人々の悲しみを歌い継ぐ島唄「犬田布節」を實さんが披露。会場は切ない旋律に包まれ、生徒たちは静かに聴き入っていた。
松岡室長は「差別を許さず、仲間を見捨てず、郷土を守るという精神は、戦後の祖国復帰運動(リーダー泉芳朗氏)や2010年の徳之島への米軍基地移設反対運動にも受け継がれている」。「劇では登場人物の怒りや悲しみ、葛藤を考えながら演じてほしい」と呼びかけた。
生徒を代表して2年生の川本萌香さんは「犬田布騒動の歴史や当時の人々の苦しみを深く理解することができた。島唄も聴かせていただき感謝。今日学んだことを文化祭の劇に生かしたい」と感謝の言葉を述べた。