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自然・火山 読売新聞オンライン 👁 6

鹿屋市に移住して絵本カフェ、桜島など見て「ズドーンと来るものが」「活動に必ずしも意義づけはいらない」

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 神戸市で生まれ育った林美智世さん(53)が昨夏、鹿児島県鹿屋市串良町の古民家を改装し、絵本や地元野菜を堪能でき、ヤギと触れあえるカフェを開いた。都会暮らしの気ぜわしさに疑問を持ち、偶然訪れた鹿児島の雄大な自然に魅了されたのがきっかけだった。「都会と田舎を結ぶ小さな交差点になりたい」――。そう語る林さんに思いを聞いた。

 ――地方に移り住もうと思った理由は。

 「専業主婦として4人の子育てに追われ、経済活動に参加していない自分を『世の中の役に立てていない』と思った時期があった。人を育てるということはもちろん素晴らしいことだが、当時はそうと思えずにいた。実家は神戸市で老舗のすし店を営み、夫は船舶エンジンの製造販売会社を経営していたため、小さい頃から都会での生活はスピードや生産性が求められていると感じていた」

 「そんな都会での『生きにくさ』を感じながら、30歳代でボランティア活動を始め、色んな異文化に触れたことも良かった。自分の当たり前が諸外国では当たり前ではないという価値観の違いにも直面し、衝撃を受けた。『幸せ』や『心が満ちる』という感覚が理解できるようになったのが大きい」

 ――なぜ鹿屋なのか。

 「3年半前、知人の紹介で、鹿屋市で釣り堀を営む方を手伝うために初めて来たが、雄大な桜島や錦江湾、佐多岬などの絶景を見て、なんて自然豊かな土地だろうと思った。全国各地を旅行した経験はあるけれど、当時の私の胸に『ズドーン』と来るものがあった。明確な理由はないけれども、自分自身がちっぽけな存在だと感じられたことが気に入った」

 ――絵本を並べたカフェを開いた経緯は。

 「平屋の古民家を借りたが、6畳二間の空き部屋に絵本約1000冊を並べ、神戸市から来た友人らに地元野菜の料理を振る舞ったら『そのままお店にしたら』と好評だった」

 「子供の読み聞かせにも使った絵本だったが、初めて出会った人同士でも絵本の感想を述べ合うと、昔からの知り合いと思えるぐらい仲良くなれる力がある。今では近所の誰かが毎日立ち寄ってくれるし、修学旅行生も泊まるようになった。ここで何か意味を持たせた活動をしようとは思っていないが、無駄も大事だと思って、自分時間を楽しんでもらえる居場所にしていきたい」

◆はやし・みちよ=4人の子供に恵まれ、いずれも小学校受験を経験。阪神大震災や多忙な子育てを経験し、「自分がどう生きたいか」を考えるようになった。絵本セラピストなどの資格も多数取得。絵本カフェ「Toco」は、月に6日間のみ営業(インスタグラムのDMで要予約)。

 さぞかし何らかの目的があって、鹿屋市で活動を始めたのだろうと思っていた。しかし、返ってきた言葉は「ノー」。活動することに必ずしも意義づけはいらないのだと諭された。

 都会で暮らしてきた分、「無駄が大事」という心のゆとりのありがたさに気づいたのだろう。私も仕事に追われる身だが、こういった場で人生をくつろぐ余裕を養っていきたい。(鶴結城)