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不祥事の隠蔽はあったのか。公益通報か否か――鹿児島県警元生安部長の守秘義務違反裁判 起訴から2年、公判日程が見通せない異例の展開に
事件・事故 南日本新聞 👁 1

不祥事の隠蔽はあったのか。公益通報か否か――鹿児島県警元生安部長の守秘義務違反裁判 起訴から2年、公判日程が見通せない異例の展開に

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 職務上知り得た秘密を退職後に漏らしたとして、鹿児島県警の元生活安全部長、本田尚志被告(62)が国家公務員法(守秘義務)違反の罪で起訴されてから21日で2年がたった。弁護側は県警の不祥事を明るみに出すための「公益通報」だったとして無罪を主張。3月には主張の支えとなり得る証拠の一部開示を鹿児島地裁が検察に命じた。非公開の場で駆け引きが活発になる一方、公判日程はいまだ見通せない異例の展開が続く。

 「公益通報者は守らなければいけない」。5月下旬に鹿児島市であった県警問題の学習会。立ち見客が出る会場で、本田被告の弁護団の一人は市民に支援を呼びかけた。

 弁護団は体制を4人から10人に増やし、公判に臨むと報告。弁護士の一人はこう強調した。「公判は早いにこしたことはない。ただ、無罪を勝ち取るためにも拙速な対応はできない」

■「重大な意味」

 2024年の司法統計によると、全国の地裁で起訴から判決が出ていない被告人のうち、2年以上かかっているのはわずか1.8%。本田被告の漏えい事件の場合、初公判さえ始まっていない。

 長期化の要因の一つは「動機に重大な意味を持つ」として弁護団が求めた証拠の開示だ。

 本田被告は退職後の24年3月、内部文書を外部に漏らしたとして同5月末に逮捕された。文書には「闇をあばいてください」との文言を付け、元枕崎署員の盗撮事件や別の警察官のストーカー容疑事件に関する情報を「告発」していた。

 検察側はストーカー事件だけに絞って起訴した。「相当な悪質性があると判断した」とする。

 弁護団にとって「枕崎署員盗撮」に関する証拠は、本田被告の動機に重大な関連があるとする一方、検察の起訴内容には触れられないため、弁護側と検察側で攻防が続いたとみられる。

 事態が大きく動いたのは今年3月。地裁は検察側に盗撮事件の捜査過程が分かる証拠群36点を開示するよう命令した。検察側は即時抗告せず決定となった。

 同時期に公判前整理手続きが始まり、裁判所、検察側、弁護側の3者が非公開で争点を整理している。

■拭えぬ疑惑

 弁護側は「明らかにしようとした内容は国家公務員法が保護する『秘密』に該当しない」と訴える。本田被告の逮捕が別事件の家宅捜索がきっかけだった経緯を踏まえ、違法な捜査・差し押さえの可能性も指摘する方針だ。

 本田被告は「野川明輝(前)本部長が県警職員の犯罪行為を隠蔽(いんぺい)しようとした」と動機を説明しており、野川前本部長を証人として呼ぶことも構想に上がる。

 不祥事の隠蔽はあったのか。公益通報か否か-。真相が見えず、県警にとっても疑惑が拭えない異例の事態。安達裕也警務部長は5月下旬の定例会見で、硬い表情のまま従来の主張を繰り返した。「隠蔽した事実はなく、公益通報には当たらない」



 本田尚志被告(62)が「野川明輝(前)本部長が隠蔽(いんぺい)しようとした」と主張する元枕崎署巡査部長による盗撮事件。県警の捜査過程や本田被告の対応をたどると、互いに不自然な点が浮かぶ。

 2023年12月、県警は盗撮事件を認知する。県警によると、野川本部長(当時)は「署で捜査を尽くし、教養(研修)の実施を」と指示した。だが、本部の首席監察官と署長間の連絡で誤解が生じ、捜査は一時止まった。

 当時、本田被告は生活安全部長。一連の経緯を知り問題と感じた。24年3月、定年退職した数日後、札幌市のライターに文書を送る。ライターは福岡市のウェブメディア「ハンター」とデータを共有した。

 翌4月、県警は別の情報漏えい事件の捜査中、捜索先の「ハンター」で本田被告の漏えいを把握した。5月、枕崎署員を盗撮容疑で逮捕。さらに本田被告も逮捕した。

 時系列でみると、盗撮事件の漏えいを知ってから署員を逮捕した流れだ。県警は「事件を隠せなくなったから捜査したという事実はない」と反論する。

 一方、本田被告の文書には、隠蔽を指示したのは野川前本部長ではなく、元刑事部長の氏名を挙げている。「本部長の隠蔽を知る人はごく少数。送り主が自分と分からないよう名前を変えた」と説明する。これに対し、県警は「元刑事部長をおとしめるための行為」との見解を示している。