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観光・グルメ 読売新聞オンライン 👁 10

奄美大島の沖合でワインを海底に沈めて熟成「豊かな海を守る一助になればと藻場造成のプロジェクトも」

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 鹿児島県の奄美大島・瀬戸内町の沖合で、ワインを海底に沈めて熟成させる取り組みが行われている。5月20日には引き揚げた「海底熟成ワイン」のお披露目会が奄美市で開かれ、参加者が味や香りを堪能した。2年前から事業を手がける東京のPR会社「 III Three(アイスリー)」の社長、森谷悠以さん(41)に事業の経緯と意気込みを聞いた。

 ――海底熟成ワインとは。

 「海底で一定期間、寝かせたワイン。水圧や潮流による揺れで熟成が進み、長期熟成したような味わいが期待される。瀬戸内町では水深20メートルの海底に1基144本入りのワインセラーを沈め、6か月熟成させている。2024年1月に6基、25年1月に1基を設置し、計約1000本を回収した。今年は7月に約200本を引き揚げる予定だ」

 ――なぜ奄美大島で。

 「他県で地域活性化のPRをしていた際に瀬戸内町の関係者と知り合い、自然環境をいかした事業ができないかを考えていた。同町にはきれいで穏やかな海があり、観光の潜在力も高い。地元の焼酎メーカーと試験的に行った取り組みの中で手応えを感じ、『海底熟成ワインをこの海で試してみよう』と決めた」

 ――引き揚げたワインはどのような形で提供される。

 「瀬戸内町で運営するワインバー『Beach Club』で提供しているほか、自社のECサイトでも販売している。ワインバーは23年11月の開業以来、このワインを目当てに来店する客が増えている」

 「企業や個人からワインなどを預かって熟成させる会員制サービス『MY SEA CELLAR』も展開している。現在は飲食店や宿泊施設などが会員になっており、これを増やすことが当面の目標。より多くの人に海底熟成ワインのことを知ってもらうため、機会創出を図っていく」

 ――藻場の造成にも取り組んでいる。

 「外から見るときれいな海も中では変容している。二酸化炭素を吸収してくれる大切な藻場が減少していることは象徴的だ。奄美の豊かな海を守る一助になればと藻場造成のプロジェクトを始めた」

 「ワインセラーを製造したメーカーと連携し、島根県・隠岐にあるこの会社の研究所に藻の種苗を移して育てている。育った藻を瀬戸内町の海に戻して藻場の再生を促す枠組み。移動距離が長いなど課題はあるが、順調に育っており、秋にはさとがえりさせたい」

 「想像した以上に味が違う」「まろやかに感じる」。奄美市で開かれたお披露目会で、海底から引き揚げたワインと通常保管された同一銘柄のワインを飲み比べた参加者たちが驚いたように話していた。

 ワインの世界では、気候や土壌など産地の個性を表す「テロワール」という概念が重要視されるという。「奄美大島で『海のテロワール』を創る」をスローガンに始まったチャレンジは、海洋環境保全と持続的活用の両立を見据えながら、加速しそうだ。(園田隆一)

◆もりたに・ゆい=京都市出身。2010年、株式会社 III Threeを設立。社名は設立メンバー3人の名前の最後に「I(アイ)」がついていたことから命名。「この名前を普通に読んでもらえる会社にしよう」との思いを込めた。ワインバー「Beach Club」の料理は、京都でフレンチレストランを経営する父・之雄さん(69)が監修している。